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HOME >  リハビリ >  いまこそ知りたい! 高次脳機能障害 5 「社会的行動障害」について

いまこそ知りたい! 高次脳機能障害 5 「社会的行動障害」について


「社会的行動障害」 について

今回は、本シリーズで扱う4種(書籍によっては より多くの、複雑に分類されている場合もあります)
の高次脳機能障害の最後となる、「社会的行動障害」についてご説明していきます。

社会的行動障害とは、脳損傷後に、感情や欲求が抑えられない「抑制欠如」や、
怒りやすくなる「易怒(いど)性」、やる気がなくなる「意欲低下(アパシー)」、
周囲の人とうまくやれない「対人技能の拙劣(せつれつ)」、
こだわりが強くなる「固執(こしつ)性」など、社会生活を送るうえで
コミュニケーション上の支障をきたす情緒や行動上の障害のことを指します。

しかし似たような症状は、他の疾患でもみることができます。
例えば、抑制欠如や易怒性は、前頭葉機能を中心に脳機能が低下する
「前頭側頭型認知症」などでも見ることができますし、
意欲低下は「うつ病」の典型的な症状の1つです。

また対人技能の拙劣や固執性に似たような症状は、
「自閉症スペクトラム」の方々にも認められることがあります。

さらには、皆さんご自身にも、思わずカッとなって抑えがきかなくなったり(易怒性・抑制欠如)、
気分が沈んでやる気がおきなかったり(意欲低下)、
何となく人づきあいが苦手でひとり時間が大好き(対人技能の拙劣)
という方もいらっしゃるかもしれません。

つまり、もともとの性格や、その他の疾患によっても似たような性格・性質を
持っている場合もあり、そのうえで更に脳損傷後に症状が顕著になる、というわけですが、
脳損傷後であれば必ずしも出現する症状ではないだけに、
社会的行動障害を明確に診断することが難しいことも少なくありません。

大切なのは、まず 脳損傷後の患者さんであれば、社会的行動障害を起こし得る、ということを
医療者や周囲の方が知っておくこと
です。

そして、様々な訓練・生活上のかかわりを通じて、どのようなシチュエーションであれば、
患者さんの症状が出現しやすいのかを少しずつ蓄積していき、
症状を軽減できるよう医療者が配慮し、現場に反映していくこと
です。
そうした対処を続けているうちに、患者さんが徐々に生活環境に慣れ、
患者さんご自身でも自己を振り返ることで より上手に日常生活・社会生活に
対応できるようになっていく
ことでしょう。

ケースによっては、内服薬によって精神面の安定を図ることも必要だと思いますし、
入院リハビリ・退院後のリハビリだけでなく、社会生活に復帰した後も
長期に渡って続けていく必要があるかもしれません。

こうした視点は、就労支援・障害者雇用にとっても重要であり、当サイトの
「そうだったのか!就労支援」シリーズでもご紹介していますので、ご参照ください。