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その熱について、熱く語ろう 4


高齢者の発熱の原因のもう1つの主役、「尿路・泌尿器の感染症」

「尿路感染症」について、少しだけ論理的に考えてみよう
尿路感染症を疑う場合、基本的には呼吸器症状を伴いません。
教科書的には、高齢者の尿から細菌が検出される確率は5割以上としているものもあり、
特に女性の場合には身体構造の点から、尿中に細菌が検出される場合も多いと思います。
尿路と肛門が近いことから、尿の細菌培養検査をしてみると、「大腸菌」が検出される場合も多いのです。
では、細菌があれば すぐに尿路感染症を起こすのか、というと、そうではありません。
尿の中に細菌がいてもすぐに発熱が起こらないのは、細菌が繁殖している「尿」が液体であり、
常に膀胱の中で尿が動いているため、細菌が定着して繁殖がしくくいという理由があります。
そして尿路感染に対する最大の防御機構として、「排尿」、つまり
「細菌が繁殖している尿を体外に排出してしまう」という方法があるのです。
そのため慢性的な膀胱炎「尿の中には細菌が多いけれど、液体ゆえに細菌の繁殖が難しく、
また排尿によって細菌を排泄できる」という理にかなった防御機構
があるため、
尿路感染症による高熱は生じにくくなっているのです。
そしてこの防御機構があるゆえに、細菌の多い尿を少しでも外に排出しようとして、
何度も排尿したくなる、つまり頻尿になるわけです。

それでも高熱をきたすことがあるのは なぜか?

しかし、それでも高熱をきたすことがありますよね。
それはなぜでしょうか?
膀胱のような袋状の臓器の中にある尿という液体は、常に流動性をもっており、
そのために感染症の原因となる細菌が その場に留まって繁殖することが難しいわけですが、
この尿の流れが滞ることによって、腎臓などの実質臓器にも感染が及んだ場合にはどうなるでしょうか?
病名で言えば腎盂腎炎など、腎臓自体にも感染の影響が及ぶ感染症については、
高熱をきたしやすいといえるかもしれません。
逆の言い方をすれば、尿路感染症を疑ったときに高熱を伴っていれば、
腎盂腎炎などの重症感染症になっている可能性を考えるべきでしょう。
特に男性の場合には、前立腺肥大症があることで尿の流れが停滞または
完全に止まってしまう場合もあり、その場合は腎盂腎炎を併発する場合もあります。
この腎盂腎炎の場合の特徴的な症状は、発熱と、背中の叩打痛(こうだつう)です。
腎臓はお腹の臓器ですが、「後腹膜臓器」といって、内臓の分類としては
「背中側の臓器」という位置づけになっています。
ですから腎臓のある位置に合わせて軽く背中を叩いてやると激しい疼痛を認められる場合があり、
腎盂腎炎をはじめとして腎臓の疾患を疑うきっかけにもなります。
もう一つ、尿路・泌尿器領域で高熱をきたす病気があるのですが、ご存知ですか?
腎・泌尿器領域で、腎臓以外の実質臓器である前立腺に炎症が及んだ場合はどうなるでしょうか。
前立腺に炎症が及ぶ、つまり前立腺炎でも高熱や高度の炎症反応をきたす場合があり、
注意が必要です(前立腺は男性にしかない臓器ですから、当然 男性の場合のみですよ)。
前立腺は直腸の近くに位置する臓器であるため、肛門直腸診で診断することができますが、
医療行為に該当するため、施設職員の方が実施するのは難しいかもしれません。
逆に言えば、尿路の感染症や炎症を疑い、腎盂腎炎の明確な所見がない場合には、
前立腺炎も疑うとよいかもしれませんね。

尿路・泌尿器の感染症でコワいのは、その原因菌のため
そして最後に覚えておいていただきたいのは、尿路感染症の原因菌は「大腸菌」であることが多く、
種類としては「グラム陰性桿菌(かんきん)」に分類されます。
このグラム陰性桿菌の細胞膜にはエンドトキシンと呼ばれる成分があり、
これにより引き起こされるエンドトキシンショックによって、
ショック状態になる場合もあり、注意が必要です。