管理栄養士が教える「高齢者への食支援」1
高齢者への食支援とは?
「食支援」という言葉をご存知ですか?管理栄養士である筆者が考える「食支援」とは、
「すべての人々が、より健康に、快適に生活するために、いつでも どこでも、
その人にとって必要な食と栄養のサポートをすること」です。
このシリーズでは、「食支援」の中でも、特に高齢者への「食支援」について解説していきます。
退院前に病院で提供している食事は、退院後も継続できるのか
病気で入院された患者さんが退院を控えている場合、患者さんやご家族に対して、
医療者は何に配慮し、どんな情報を伝えるべきなのでしょうか。
まず、配慮したいのは、「退院前に病院で提供している食事は、退院後も継続できるのか」ということです。
具体的に言えば、食事の調理や設定が複雑になっている場合や、栄養補助食品を多用するあまり、
高コストゆえに退院後は続けられない場合、などです。
【食事の調理や設定が複雑な場合】
例えば、「肉や魚は常菜だけど、野菜だけは刻む」などの食材別の形態対応や、
「おかずにたんぱく質のパウダーを混ぜている」など、たんぱく不足の患者さんに対して、
医療機関や入所施設が個別に行っていることは、
他の施設や自宅では難しい、一般的ではない、という場合も多くみられます。
特に、自宅へ帰る場合は、介護者の年齢や体力、調理作業の得手不得手、持っている調理道具、
かけられる時間などの情報を把握しなければ、最適と考えて提供していた食事を
退院後も継続することができなくなってしまいます。
【高コストゆえに退院後は続けられない場合】
また、食事摂取量が少ない場合に少量で高栄養の摂取が可能となる補助食品は、
高コストのために継続が困難となることがあります。
例えば毎食200kcalの栄養補助飲料を飲んでいる患者さんが、自宅退後も続けていく場合、
1本あたり税抜220円として、1か月で
220円 × 3食 × 31日 = 20,460円(税込22,506円)
…と高額になります。
もちろん、1日3本飲んでも600kcalなので、通常の食事代も必要となるため、
「食事」にかかるコストはこれ以上になります。
こうしたコスト面にも配慮する姿勢が、医療者には求められます。
回復期リハビリ病棟の管理栄養士である筆者は、
「家に帰っても食べられそうな患者さん」に対しては、肉、魚、卵、乳製品、
大豆製品を中心に食べられそうなものを積極的に食べてもらうようにし、
栄養補助食品の購入方法を説明するのみにとどめています。
そして、月に一度は体重を計って、もとの体重と比べて1か月に3%以上
(例:50㎏の人であれば1.5㎏以上)減少していれば、栄養補助食品を併用するか、
かかりつけ医に相談するよう伝えます。
一方、「家に帰ったら、さらに食べなくなりそうな患者さん」には、
主治医に医薬品の栄養剤(ラコール®、エンシュアリキッド®など)を退院時に処方してもらい、
「1日1本 飲んでくださいね」、と伝えます。
その場合、味が口に合わないと結果的に続けられなくなっては本末転倒ですので、
退院前に主治医に栄養剤を処方してもらって、飲めるかどうか、試しに飲んでもらうことにしています。
そして、補助食品を飲んでもらう目的を理解してもらえるようにお話をします。
いずれのケースでも、病院での食事摂取状況をケアマネジャーさんに報告し、
退院後の食事摂取の状況を気にかけていただくようお願いをします。
今回は「食支援」という言葉をご紹介しつつ、病後の高齢者への食支援において
医療者が意識すべきポイントをご紹介しました。
本シリーズでは次回以降も、皆さんと一緒に「食支援」について考えていきたいと思います。
「すべての人々が、より健康に、快適に生活するために、いつでも どこでも、
その人にとって必要な食と栄養のサポートをすること」です。
このシリーズでは、「食支援」の中でも、特に高齢者への「食支援」について解説していきます。
退院前に病院で提供している食事は、退院後も継続できるのか
病気で入院された患者さんが退院を控えている場合、患者さんやご家族に対して、
医療者は何に配慮し、どんな情報を伝えるべきなのでしょうか。
まず、配慮したいのは、「退院前に病院で提供している食事は、退院後も継続できるのか」ということです。
具体的に言えば、食事の調理や設定が複雑になっている場合や、栄養補助食品を多用するあまり、
高コストゆえに退院後は続けられない場合、などです。
【食事の調理や設定が複雑な場合】
例えば、「肉や魚は常菜だけど、野菜だけは刻む」などの食材別の形態対応や、
「おかずにたんぱく質のパウダーを混ぜている」など、たんぱく不足の患者さんに対して、
医療機関や入所施設が個別に行っていることは、
他の施設や自宅では難しい、一般的ではない、という場合も多くみられます。
特に、自宅へ帰る場合は、介護者の年齢や体力、調理作業の得手不得手、持っている調理道具、
かけられる時間などの情報を把握しなければ、最適と考えて提供していた食事を
退院後も継続することができなくなってしまいます。
【高コストゆえに退院後は続けられない場合】
また、食事摂取量が少ない場合に少量で高栄養の摂取が可能となる補助食品は、
高コストのために継続が困難となることがあります。
例えば毎食200kcalの栄養補助飲料を飲んでいる患者さんが、自宅退後も続けていく場合、
1本あたり税抜220円として、1か月で
220円 × 3食 × 31日 = 20,460円(税込22,506円)
…と高額になります。
もちろん、1日3本飲んでも600kcalなので、通常の食事代も必要となるため、
「食事」にかかるコストはこれ以上になります。
こうしたコスト面にも配慮する姿勢が、医療者には求められます。
回復期リハビリ病棟の管理栄養士である筆者は、
「家に帰っても食べられそうな患者さん」に対しては、肉、魚、卵、乳製品、
大豆製品を中心に食べられそうなものを積極的に食べてもらうようにし、
栄養補助食品の購入方法を説明するのみにとどめています。
そして、月に一度は体重を計って、もとの体重と比べて1か月に3%以上
(例:50㎏の人であれば1.5㎏以上)減少していれば、栄養補助食品を併用するか、
かかりつけ医に相談するよう伝えます。
一方、「家に帰ったら、さらに食べなくなりそうな患者さん」には、
主治医に医薬品の栄養剤(ラコール®、エンシュアリキッド®など)を退院時に処方してもらい、
「1日1本 飲んでくださいね」、と伝えます。
その場合、味が口に合わないと結果的に続けられなくなっては本末転倒ですので、
退院前に主治医に栄養剤を処方してもらって、飲めるかどうか、試しに飲んでもらうことにしています。
そして、補助食品を飲んでもらう目的を理解してもらえるようにお話をします。
いずれのケースでも、病院での食事摂取状況をケアマネジャーさんに報告し、
退院後の食事摂取の状況を気にかけていただくようお願いをします。
今回は「食支援」という言葉をご紹介しつつ、病後の高齢者への食支援において
医療者が意識すべきポイントをご紹介しました。
本シリーズでは次回以降も、皆さんと一緒に「食支援」について考えていきたいと思います。
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