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血液検査データの読み方:実践問題編3

[2021.04.01]

データを読み解き、検査を進め、原因を探そう

 

<実践問題編>では、実際のデータを見たら、どう考え、どんな検査を行い、どう対処すべきかを学んでいきます。少し難しいという方は、「血液検査データの読み方 「血算総決算」や「差がつく生化学」 とリンクしていますので、併せてご参照ください。

 

貧血について勉強してきた今回のシリーズですが、実践問題編1で紹介した「続発性貧血」以外にも、実践問題編2では「腎性貧血」の合併もあり、更には原因不明の高Ca血症を伴っていることが判明しました。そして2では検索を後回しにしましたが、「続発性貧血」の原因となる慢性炎症が隠れているかもしれないのでしたね。改めて入院時のデータをみてみると…、

 

WBC 107.0×102/μl, RBC 368×104/μl, Hb.9.7g/dl, HCT 29.8%, MCV 86.2fl, MCH 29.2pg, MCHC 33.8%,Plt. 31.4×104/μl, Neutro 82.2%, Eosino 3.4%, Baso 1.0%, Mono 5.7%, Lympho 7.8%, Na 135mmol/l,K 5.2mmol/l, Cl 95mmol/l, Ca 10.4mg/dl, TP 6.5g/dl, Alb. 2.8g/dl, UA 7.8mg/dl, BUN 22mg/dl,Cr. 1.52mg/dl, CRP 1.97mg/dl, eGFR 27.6, Fe 38μg/dl, TIBC 218μg/dl, Ft 507.5ng/ml

 

改めて上記データから「炎症」に関するデータを抜粋してみると、「左方移動」を伴う白血球の上昇CRPの軽度上昇貯蔵鉄(Ft=フェリチン)の増加、そして慢性炎症による低栄養なのか低Alb.血症、などがありました。脳梗塞後の炎症と言えば、嚥下機能の低下による「誤嚥」を強く疑うべきです。入院後の体温の記録を見ると、確かに連日の微熱、時に38℃近い高熱を認めており、SpO2もわずかに低下することがありました。慢性炎症の原因は、「誤嚥」によるものだった、というわけです…。

・・・しかし、ホントにそれだけでしょうか? もちろん「誤嚥」があれば、微熱も見られるでしょうし、SpO2が低下してもおかしくありませんが、「高Ca血症」はどう説明しますか? 「続発性貧血」、「発熱」、「炎症反応」、「高Ca血症」があり、念のために「悪性疾患」が隠れていないか、疑ってみるべきではないでしょうか?

 

ということで、各種画像検査を行ったところ、肺腫瘍(扁平上皮癌)がみつかりました。高Ca血症の原因は、肺腫瘍から分泌されるPTHrPという物質で、Caを上昇させる副甲状腺ホルモン(PTH)に似ています。PTHrPを測定したところ、上昇を認めました。

このようなケースはまれではありますが、普段からデータや所見を細かく見て自分で考えることで、何気ないデータの裏に隠された疾患を見つけることができる場合があります。今回は、筆者がどのようにデータを見ているのか、ということを、実例を挙げて、順を追って説明しましたが、少しでも皆さんの参考になったならば幸いです。

 

データを読み解くうえで、大切なこと

このようなケースを勉強した後では、どんな症例も、データも、常に疑いの目で見てしまいますよね。しかし稀な疾患を見つけること以上に大切なのは、「当たり前の疾患、可能性が高い疾患をきちんと疑うことができるか」、です。今回例に挙げたケースでも、一見正常に見えるデータが実は異常だったり、ありふれた疾患が2つ重なることで全く異なる珍しい疾患に見えてしまうことがあります。短期間でデータを読み解く力を身に着けることは難しいと思いますが、このFUNMEDで紹介している「5分で分かる、臨床のコツ」を積み重ねていけば、少しずつでも成長できるのではないでしょうか。

 

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