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「不穏」に対するアプローチ3

[2021.04.12]

薬物的アプローチについて

前回も触れたように、「不穏」という状態に対しての薬物治療は大切な治療選択肢の一つです。患者さん本人や周囲の人に対しての負荷(身体的にも精神的にも)が高い不穏に対しては速やかに薬物治療を行う必要があります。

主にせん妄やBPSDを念頭に考えていきますが、その薬物治療における基本的な考え方は、背景にある身体疾患の治療であったり、療養環境を整えるまでの時間稼ぎというイメージです。また、背景にうつ病や統合失調症などの精神疾患が疑われる場合は精神科受診までのつなぎということになります。

 

薬物治療の基本としては高齢者に限らず、やはり使う薬の用量、種類、期間などは適切な量に留めることは大切です。そして、最大の問題点としては、不穏の原因となりやすい「せん妄」や「BPSD」に対して保険適応が通っている薬がほとんど存在しないということです。唯一せん妄に適応があると言えるのはチアプリド(グラマリール®)ですが、実際の臨床現場ではその他いろいろな向精神薬を患者さんの症状に合わせてオーダーメイド的に使っており、日本に限らず国際的にもそれが標準的な治療になっているようです。

 

この点に関しては、2011年9月に厚生労働省から、クエチアピン(セロクエル®)、リスペリドン(リスパダール®)、ハロペリドール(セレネース®、リントン®)、ペロスピロン(ルーラン®)の4剤(いずれも統合失調症に対する抗精神病薬)については「器質性疾患に伴うせん妄・精神運動興奮状態・易怒性に対する適応外使用を審査上認める」という通知が出され、以前よりは使いやすくなっています。ですが、実際に保険適応を通っているわけではないですし、実際の臨床現場ではこの4剤以外を使うことも多いです。保険適応を通っていない以上は、患者さんやご家族などにきちんと説明し、薬剤使用についてご理解をいただいておくことが大切です。実際に、説明文書を用いてせん妄やBPSDの特徴、薬物治療のメリット・デメリットなどを可能な限りわかりやすくご家族にも説明し、了解を得るとよいでしょう。

 

また、疾患の情報、薬の効果や副作用の情報だけでなく、せん妄や認知症といった特殊な状態においては患者さん本人の理解力、判断力が損なわれている可能性が高いわけですが、そのような状態で薬を使用していく倫理的な問題もはらんでいることの説明や配慮も必要だと考えられます。

 

「向精神薬」と「抗精神病薬」

ちなみに余談ですが、「向精神薬」とは精神作用を持つ薬を幅広く指す用語で、「抗精神病薬」は向精神薬の一部で抗幻覚・妄想作用を持ち、主に統合失調症の治療薬ということになります。よくごちゃまぜに使用されていたりしますが、このような意味の違いがあります。

 

次回は、具体的な薬剤名を挙げて、実際の薬物治療ついてご紹介したいと思います。

 

→「不穏」に対するアプローチ4

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