血液検査データの読み方:レベルアップ! 実践問題編2
データを読み解き、検査を進め、原因を探そう
【実践問題編】では、実際のデータを見たら、どう考え、どんな検査を行い、
どう対処すべきかを学んでいきます。
少し難しいという方は、「血液検査データの読み方 「血算総決算」や
「差がつく生化学」 とリンクしていますので、
併せてご参照ください。
今回は、実践問題編1の続き、をご紹介します。
前回ご紹介したデータに 追加検査で判明した鉄分のデータを加えると…、
WBC 107.0×102/μl, RBC 368×104/μl, Hb.9.7g/dl, HCT 29.8%, MCV 86.2fl, MCH 29.2pg, MCHC 33.8%,Plt. 31.4×104/μl, Neutro 82.2%, Eosino 3.4%, Baso 1.0%, Mono 5.7%, Lympho 7.8%, Na 135mmol/l,K 5.2mmol/l, Cl 95mmol/l, Ca 10.4mg/dl, TP 6.5g/dl, Alb. 2.8g/dl, UA 7.8mg/dl, BUN 22mg/dl,Cr. 1.52mg/dl, CRP 1.97mg/dl, eGFR 27.6 『追加検査』Fe 38μg/dl, TIBC 218μg/dl, Ft 507.5ng/ml
データから読み取った「続発性貧血」に関連するデータを太字で示しておきました。
「続発性貧血」の原因は慢性的な炎症が原因でしたが、確かにWBC(白血球)は上昇しています。
更にNeutro(好中球)も高値です。こういった状態を「左方移動」というのでしたね
(忘れている方は「血算総決算2」へGo!)。
どこかに炎症がありそうですが…。
炎症の検索は後にして、ここでは貧血についてもう少しじっくり考えてみましょう。
さて、皆さんなら次にどのデータに着目するでしょうか?
異常のあるデータに着目すると…、
K 5.2mmol/l, Ca 10.4mg/dl, Alb. 2.8g/dl, UA 7.8mg/dl, Cr. 1.52mg/dl, eGFR 27.6
どうやら腎機能障害がありそうですね。
Cr.の値は正常範囲よりもやや高値ですが、eGFRは低下が顕著です。
Cr.値は筋肉量によって影響を受けるため、痩せている高齢者では判断が難しいのでしたね。
確かにこの症例ではAlb.(アルブミン)も低値であり、筋肉量が少ない高齢者のイメージに合致しています。
そこで有用なのがeGFRでした。この辺りが苦手な方は、「差がつく生化学4」をご参照ください。
腎機能の低下に伴って、尿中への尿酸の排泄が低下するため、血液中の尿酸値が上昇しています
(「差がつく生化学6」を参照のこと)。
どうやら貧血の原因として、「腎性貧血」の可能性もありそうですね。
しかし よく勉強している方なら、「腎性貧血」は「正球性」の貧血では(?)と考えるはず。
前回指摘した「続発性貧血」などの「小球性」の貧血に「正球性」の貧血が合併している場合、
MCVは低値となり、「小球性」によって「正球性」貧血の存在が隠されてしまうことがあります。
ここまで理解出来たら、「デキる医療者」に一歩近づきますね。
しかし実はもう1つ、デキる人なら気づくポイントがあります。
それはCa(カルシウム)の値です。
この値、ほぼ正常ですよね。何がおかしいのでしょうか?
ヒントは「腎機能障害」です。
実は「腎機能障害」がある症例ではCaは低下することが多いのです。
しかもこの方は低Alb.(アルブミン)血症を伴っています。
実はCaの値は、「アルブミン補正」をする必要があり、血清のCa値に、
(4.0-Alb.値)を加えて算出する必要があるのです。
ということは、この方の場合、【真のCa値= 10.4 + (4.0-2.8) = 11.6】となるのです。
本来なら低Caになるはずの腎機能障害で、むしろ高Caとは…。さて、原因は?
高齢者では、骨粗鬆症や骨折の既往に対して、Vit.D製剤を服用していることが多いのですが、
実はCaが高値となる原因として、Vit.D製剤の過剰内服による「Vit.D中毒」も少なくないのです。
おお、これが原因によるCa上昇だったのか!
と考えましたが、この方はVit.D製剤を内服していませんでした。
さて、Ca上昇の原因は、いったい…。
今回はここまで!
前回、今回と、かなり難しい内容で、理解するのも大変でしたよね。
次回は「実践問題編」の最終回として、更に踏み込んで考えてみましょう!
どう対処すべきかを学んでいきます。
少し難しいという方は、「血液検査データの読み方 「血算総決算」や
「差がつく生化学」 とリンクしていますので、
併せてご参照ください。
今回は、実践問題編1の続き、をご紹介します。
前回ご紹介したデータに 追加検査で判明した鉄分のデータを加えると…、
WBC 107.0×102/μl, RBC 368×104/μl, Hb.9.7g/dl, HCT 29.8%, MCV 86.2fl, MCH 29.2pg, MCHC 33.8%,Plt. 31.4×104/μl, Neutro 82.2%, Eosino 3.4%, Baso 1.0%, Mono 5.7%, Lympho 7.8%, Na 135mmol/l,K 5.2mmol/l, Cl 95mmol/l, Ca 10.4mg/dl, TP 6.5g/dl, Alb. 2.8g/dl, UA 7.8mg/dl, BUN 22mg/dl,Cr. 1.52mg/dl, CRP 1.97mg/dl, eGFR 27.6 『追加検査』Fe 38μg/dl, TIBC 218μg/dl, Ft 507.5ng/ml
データから読み取った「続発性貧血」に関連するデータを太字で示しておきました。
「続発性貧血」の原因は慢性的な炎症が原因でしたが、確かにWBC(白血球)は上昇しています。
更にNeutro(好中球)も高値です。こういった状態を「左方移動」というのでしたね
(忘れている方は「血算総決算2」へGo!)。
どこかに炎症がありそうですが…。
炎症の検索は後にして、ここでは貧血についてもう少しじっくり考えてみましょう。
さて、皆さんなら次にどのデータに着目するでしょうか?
異常のあるデータに着目すると…、
K 5.2mmol/l, Ca 10.4mg/dl, Alb. 2.8g/dl, UA 7.8mg/dl, Cr. 1.52mg/dl, eGFR 27.6
どうやら腎機能障害がありそうですね。
Cr.の値は正常範囲よりもやや高値ですが、eGFRは低下が顕著です。
Cr.値は筋肉量によって影響を受けるため、痩せている高齢者では判断が難しいのでしたね。
確かにこの症例ではAlb.(アルブミン)も低値であり、筋肉量が少ない高齢者のイメージに合致しています。
そこで有用なのがeGFRでした。この辺りが苦手な方は、「差がつく生化学4」をご参照ください。
腎機能の低下に伴って、尿中への尿酸の排泄が低下するため、血液中の尿酸値が上昇しています
(「差がつく生化学6」を参照のこと)。
どうやら貧血の原因として、「腎性貧血」の可能性もありそうですね。
しかし よく勉強している方なら、「腎性貧血」は「正球性」の貧血では(?)と考えるはず。
前回指摘した「続発性貧血」などの「小球性」の貧血に「正球性」の貧血が合併している場合、
MCVは低値となり、「小球性」によって「正球性」貧血の存在が隠されてしまうことがあります。
ここまで理解出来たら、「デキる医療者」に一歩近づきますね。
しかし実はもう1つ、デキる人なら気づくポイントがあります。
それはCa(カルシウム)の値です。
この値、ほぼ正常ですよね。何がおかしいのでしょうか?
ヒントは「腎機能障害」です。
実は「腎機能障害」がある症例ではCaは低下することが多いのです。
しかもこの方は低Alb.(アルブミン)血症を伴っています。
実はCaの値は、「アルブミン補正」をする必要があり、血清のCa値に、
(4.0-Alb.値)を加えて算出する必要があるのです。
ということは、この方の場合、【真のCa値= 10.4 + (4.0-2.8) = 11.6】となるのです。
本来なら低Caになるはずの腎機能障害で、むしろ高Caとは…。さて、原因は?
高齢者では、骨粗鬆症や骨折の既往に対して、Vit.D製剤を服用していることが多いのですが、
実はCaが高値となる原因として、Vit.D製剤の過剰内服による「Vit.D中毒」も少なくないのです。
おお、これが原因によるCa上昇だったのか!
と考えましたが、この方はVit.D製剤を内服していませんでした。
さて、Ca上昇の原因は、いったい…。
今回はここまで!
前回、今回と、かなり難しい内容で、理解するのも大変でしたよね。
次回は「実践問題編」の最終回として、更に踏み込んで考えてみましょう!
→ 医師はデータから何を読み解くのか...
→ ここまできたら、あと一息